桜色ノ恋謌
結局二人で絶叫系を制覇したら、もう閉園に近い時間だった。



「……そんなに楽しかった?」

「うん!また来たいよ!」


そっか、と鳥羽さんは優しく笑った。


「なら、今日の記念になんか買ってやろうか?」


いつもより優しい声の鳥羽さんにドキッとする。


打ち上がる花火の光に照らされた鳥羽さんの顔はどこまでも優しくて。


元々整った顔立ちだから、こうやって真剣な表情をした時の鳥羽さんは反則だと思う。


カッコよくてドキドキするじゃない。




答えをためらっていたあたしの手を強引に繋ぐと、鳥羽さんはぬいぐるみの専門店に入った。


最初に撮影した熊のキャラクターのぬいぐるみ。


鳥羽さんがもふもふのぬいぐるみを無造作に1つ掴んで会計を済ませると、それをあたしにぽんと渡した。



「……いつも頑張ってる咲絢に、俺からのプレゼント」


鳥羽さんがあたしから顔を背けたのは何でだろう?


そしてあたしも、鳥羽さんの顔を見れないのはどうして?





なぜだかはよく分からないけど、あたしはその時恭哉くんのことを不意に思い出した――――。


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