桜色ノ恋謌
「咲絢、スタンバイだ」

與羽さんの笑顔に見惚れていた私の肩を、鳥羽さんが軽く叩いた。


鳥羽さんには、相変わらずいつものように一線を引いた硬い態度で頷き返す。


無駄口は叩かない。


あくまで鳥羽さんとは、マネージャーとタレントとしての間柄で通すつもりだ。


先に歩く鳥羽さんの背中に、黙って着いていく。



やけにその背中が寂しげに見えるのを見ないようにして、私は仕意識を仕事に切り替えた。





現在、パークでは『スプリングファンタジー』という季節イベントを開催している。

今日は春の装いに衣替えしたキャラクター達に会って、最初に渡されたパークのマップにスタンプを押してもらい、オリエンテーリングをしながらパーク内を紹介するのがメインメニューらしい。



そして、まずはパーク入り口でキャラクターを交えてのカメリハ。


それが上手くいったので次に本番収録開始。


これは最初に私の自己紹介から始まり、それから『スプリングファンタジー』についての説明を行う。


説明が終わったところで、與羽さんが登場。


與羽さんのパークに関しての思い出や過去のエピソードなどを語ってもらう。その與羽さんのエピソードは、どれも旦那さんとの思い出で語られてしまった。


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