桜色ノ恋謌
ああもう、この耳年間たちめが。


「鳥羽さんと一緒にいると、ドキドキするんだよね。それが恭哉に対して後ろめたい気持ちからくる緊張感なのか、それとも…恋愛感情としてのドキドキなのかは、自分でもよくわかんない」


みんなの視線を逸らしながら、私は肩を竦めてペットボトルのお茶を飲み干した。


こんな話を暴露して気恥ずかしいというのもあるけど、一旦はまず自分の気持ちに整理をつけたかったからだ。


「もういいじゃん二股で」という大地君や「梶社長は搾取用、本命はマネージャーでよくね?」なんていう月島君の大層失礼な助言には耳も貸さず、私はただ無意識に公佳ちゃんをみつめていた。



「提案なんだけど」


思案に耽っていた公佳ちゃんが、ようやく口を開いた。


「迷っている咲絢に、的確なアドバイスなんてしてあげられないけど、こういう方法もあるんじゃない?」

そう言うと、公佳ちゃんは台本を取り出し、ある台詞の上で指を止めた-ーー。
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