呪島~ノロイジマ~
「美春止めて! 私は大丈夫じゃけん」



「え?」



「峠越えて行くけん。船出してくれんでええよ」



「ちょっと待てや、彰子さん」


出て行こうとする彰子に向かって、貴志が声をかけた。




「何でしょう?」


「あんた、こんな時間に一人で峠を越えるんか? なんぼなんでも危ないでぇ」




「大丈夫ですよ。昔は何度も通ってましたから」


「そりゃアンタは沖神の出ぇ(出身)じゃけどなぁ、でも、アノ頃とは違うじゃろう。とりあえず大輔らぁが帰ってくるまでちょっと待っとけや」



「夕方から行って、今まで帰ってこないのに……本当に帰って来ると思いますか?」



「そ……そりゃ分からんけど……」


彰子に睨まれて、貴志は口ごもった。
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