きれいな恋ばかりじゃない
「・・・・・」

「・・・・・」

周りの空気の流れがまるで止まったみたいに、二人して黙ってしまう。ていうか、とんでもない事を言われた・・・よね?

頭の中が期待とか恥ずかしさでぐちゃぐちゃだけど、何か言わなきゃ、と口を開いた。ちょうどその時――


ヒュゥーードンッ!・・・パーーン


大きな花が夜空に咲いた。

「すごい!」

公園まであともう少しのところの道路だけど、ここからでもこんな綺麗に見えるんだ・・・!

「この辺りね、土地の髙さがあるから穴場なんだよ」

空を見上げながら公園までの道を歩く。お互い無言だったけど、さっきまでのきまずい空気はもうなくなっていた。



・・・・・


公園は広くて、カップルやら親子連れの人達が私達と同じように、花火を見に来ていた。穴場だもんね。

私達は空いてるベンチを見つけて、そこに座ることにした。

「先輩、もしよかったら食べてください!夜食のおにぎりです・・」

緊張して声が震える。顔が熱くて、口の中もカラカラに乾いてるし、手も汗ばんでる。絶対いま変なことになってる!変な子だと思われたらどうしよう、なんて心配になったけど、それは一瞬で吹き飛ぶ。

「ありがとうっ」

「・・・っ」

先輩が本当に嬉しそうに笑ったから。


多分これは自惚れとか勘違いじゃない。心の底から喜んでくれてるんだ。そういう気持ちが先輩の表情から、声から溢れてるのがわかる。

先輩ってこんなに感情表現が豊かな人だったんだ・・・。なんだかかわいい。

「あ、あんまり期待しちゃダメですよっ!?料理なんてほとんど初心者なんですから!」

「ね、食べていい?食べちゃうよ?」

「って、もう開けてるじゃないですか!」

いただきます。とおにぎりを口に運ぶ先輩を、ハラハラしながら見守る。一応自信作だけど、やっぱり物凄く不安。

食い入るように見つめていると先輩の手が伸びてきて、私の頭を撫でる。

「おいしい!」

「うー・・よかったぁ」

安心してそれまで張りつめていた緊張が解れて、一気に力が抜けた。ちょっと感動して泣きそう。

先輩はよほどお腹が空いていたのか、四つあったおにぎりをぺろりと平らげて、ごちそうさまでした、と最後に手を合わせた。

「手作りの夜食を食べながら、花火を見るって最高だなぁ」

「褒めすぎですよ!これ以上褒めたってなにも出ませんよー」

「えー。お世辞じゃないんだけどな」


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