君に逢えるまで・・・
どうやってレストランから出たか思い出せないくらい酔いが廻ってしまった。



外は突然の雨が降っていた。



酔っている自分にはちょうど良い雨だ。



タクシーを呼ぶこともなく、ただ行くあてもなく歩く。



雨に当たりながら少しずつ思い出す記憶。



パズルのピースが頭の中でどんどんとはめられていく。



記憶が鮮明になるに連れて、これは夢ではないと思い知ってきた。





『詩織、ずっと待たせてごめん。やっとこの言葉を言える自分になれたんだ。俺と結婚して欲しい…』



詩織は、目の前に出されたダイヤの指輪を黙ったまま見つめるだけだった。



詩織はプロポーズを、
この指輪を受け取ってくれると自信があった。



俺達の付き合った6年は無駄じゃないと思っていたから。



『し……』



彼女の名前を言う俺の言葉を遮るように詩織が口を開いた。



『遅いよ…』



『遅いって…?』



『私…お見合いするの…
もう決めたことなの。
だから…、だから健吾と 結婚はできない……』



『ははっ…冗談だろ…?』



冗談だよって言えよ。

膝の上に乗せてある拳に力が入る。

頭の中が理解できないまま詩織からの言葉を待った。








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