桃橙 【完】
2人を乗せた車が去った後、自分も仕事に行くかと駐車場へ向かおうとした時



「……父さん?」



マンションの傍には、父さんを乗せた会社の車が横付けされていた。


窓が開いて父さんの顔を覗きながら



「なに、帰国してたの?」


「あぁ…」


「俺も今から会社に行くから」


「陶弥」


「あん?なに?」


「…さっきの車は、」


「あぁ、宗元。総だよ、総」


「…宗元くんか」


「何かあった?」


「いや…」


「じゃあな、また会社で」


「あぁ…」



そのまま、車のパワーウィンドウを閉めて静かに走り出す父さんの車を見送ってから、俺も会社に向かった。
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