静かな涙【完】
ずぶ濡れになった鞄を持った時…






「………の…?」






浩司が何か呟いた…





私は、浩司を見つめる…








「…また…逃げるの?」





今度はハッキリと声が聞こえた…








「…行くなよ…」





そう呟いた浩司が、私の腕を引き寄せ、抱き締める…。





「……真弓…………」





………





抱き締められた瞬間、再び熱い滴が込み上げて来る…




胸が張り裂けそうで…





息も途切れそうで苦しいのに…





涙が止まらないんだよ…





『……浩司……うっ…うっうっ……』





浩司の胸元に顔を埋めて、ただ…ただ…
ひたすら泣いた…





苦しいよ…




浩司…




切ないよ…




浩司…




辛いよ…




辛いよ……




辛くて堪らないよ…




浩司…――――


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