静かな涙【完】


「‥真弓ちゃん、見送りありがとう。向こうに行っても頑張れよ。」

浩司がそう言って微笑んだ。




ズキッとガラスの破片が私の心を貫くような
痛みが走った…




言ってはくれないんだ‥

最後の最後まで

私は待っていたのに‥


貴方の言葉を待っていたのに…







その微笑みに返す事が出来ない…












私の涙が一気に溢れかえる‥

ポタポタと

ポタポタと…



止めたいのに、笑って送りたいのに‥

手で拭っても拭ってもドンドンと溢れかえる‥






浩司が私を見ないように‥


背を向けた‥




ねえ…

私、笑えないよ…

笑いたいのに笑えないよ‥


浩司の背中を見つめる‥




こんなにも、こんなにも好きなのに

今になっても私、どうしたらいいのか解らないよ…




浩司が側に居てくれたらそれだけで良かったんだよ‥


それだけで幸せだったんだよ…



それなのに…

それなのに…




『行かないで…お願い…行かないで…』



気がつくと、そう呟いて‥
私は浩司の袖を引っ張っていた‥




浩司は背を向けたまま、振り返らない‥





「‥ごめん‥真弓ちゃん…。」





そう言って、私の手をそっと外した…。







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