静かな涙【完】
「……ん……真弓ちゃん…」



私は呼ばれてハッと気付く…



『あ…はい…』




「ち…ちょっと手伝ってもらっていいかな?」



『はい…』




浩司さんはお姉ちゃんを抱き抱え、ボートに乗せようとしていた。



揺れるボートを押さえる…




「…よいしょ……」




浩司さんの掛け声が…あの時を思い出す…




『真弓、お留守番させてごめんね。荷物頼むね』



お姉ちゃんが、私に言いながら…



手を降った…




私も微笑みながら頷く…




―――――――
―――――




お姉ちゃんと浩司さんがどんどん離れて行く…




私は…




瞬きも忘れて…



二人を見つめていた…




ポロポロ…――――




………




あれ…?




なんで涙なんか…




なんで涙なんか出てくるの…?




止めてよ…




泣くのなんて止めてよ…




ねぇ…――――




ねぇ…私…




泣くのなんてみっともないよ…




止まってよ…




涙なんて…





私は…




お姉ちゃんに、笑いながら手を降って…




笑いながら泣いていた…――――


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