椿山亜季人の苦難日記

屋上の秘密(p2-

世の中には、様々な人間がいる。

俺はしみじみ、そう思う。
生まれて17年と数ヵ月、俺の趣味は変わらず、『学校の屋上で、座り込んで本を読むこと』だった。

…さみしいって?まっ、そこは、ツッコミ入れなくていいよ~。世の中にはいろんな人間がいるんだからね。

屋上は、すぅっとした風が、時に激しく吹き付ける。
筋肉の付きにくい俺は、かなり細くて、「風で倒されそうだ」と、失礼なヤツは言う程だ。

でも、俺はその風が好き。
静かに風の音を聞きながら過ごすのが、俺の嗜好と言うやつだ。

世の中にはいろんな人間がいる。

たとえば、俺がこうして屋上で贅沢な時間を過ごしている頃、このコンクリートの塊のなかでは、個性豊かな若者が、日々戦っている。


廊下にたむろする、可愛らしい女の子達。話題は専ら、恋愛である。
その中の一人が言った。
「やっぱり、自分より背が低い男は嫌よね~。」

「えっ」

少し遠くからその様子を見ていた男は、思わず声をもらした。

小柄な彼…。

『例えば、好きな女の子の興味の対象から、速攻はずされていたり』



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