君がいた夏





そうして、陽平は話し出した。




「俺さ、実は、あのあと家が火事になっちまって、そんで、家具とか全部燃えちゃったから、田舎に帰ってたんだ」




「火事……?え、だ、大丈夫だったの?」




「ああ、俺も、弟たちも、お袋も、なんともなかった。ただ、親父がちょっと火傷しちゃって、仕事とか出来なくなったから、それで親戚の家に行くことになったんだ」





「……そっか……」





そう言えば、次の日火事とか何とか噂聞こえてきたけど、特に何も気にしなかったからな……。





まさか陽平がそんな事になってたなんて、思い付きもしなかった。





それが急に申し訳なくなってきて、私は陽平の話を遮って頭を下げた。





「それで今年、少し落ち着いたから帰ってこれるようになって……って、葉月?」





「ごめんっ、本当ごめんっ……!陽平がそんな大変な事になってるのに、私、何もしてあげられなくてごめんなさいっ……」





ほんと、情けない。



何も知らなくて……ただ、ウジウジしてただけなんて。






「そんな、葉月が謝ることじゃねえよ、俺も、葉月の所行く暇が全くなかったわけでもなかったのに、行かなくて……」





「それは仕方ないよ!それに、それだけじゃないの。私、何も知らないのに陽平のこと恨んじゃってた事もあったから……だから、ごめんなさい」





そう言って、私はまた頭を下げた。






「葉月……」





「会えて良かった」





ごく自然に、私の口からその言葉がこぼれた。





今日陽平に会えなかったら……私、ずっと陽平を誤解してる所だった。





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