送り狼

先程の夢(?)のような不思議な体験の最中に、

「実はそうなんじゃないか?」

とは、思っていた…。


が、これで、はっきりした。


銀狼の言う『夏代子』とは、おばあちゃんの事なんだ…。

この写真を見る限り、私とおばあちゃんは、本当によく似ている。

違う所と言えば、私の髪は、茶髪で、

ゆるいパーマが肩まであるのに対して、

おばあちゃんの髪はサラサラの黒髪が腰まであるって事ぐらいだ。


私ですら、その写真に写っているのは自分かと思った程だ…。


銀狼が間違えてしまうのも無理はない。

それに、その確証を裏付ける理由は他にもある…。



子供の頃、私があまりにも犬神様のお伽話をせがむからか、

ある夜、おばあちゃんがこっそり私にだけ教えてくれた事…。


『おばあちゃんはね、犬神様に会ったことがあるんだよ……』


それを聞いた夜は、興奮して眠れなかったのを覚えている。


そして…


恐らくだが……


私はその時、犬神様と出会った時の話を聞いていたはずだ……。



……しかし、やっぱりどうしても思い出せない…。




その事を思い出そうとすると、頭に霧がかかったように、ボヤけてしまって、その先に辿り着けない……。


結果解った事は、銀狼の言う『夏代子』はおばあちゃんだった、

という事と、先程の体験から、二人はかなり親密な仲だったという事だけだ…。



そして、お互い愛し会っていたはずのなのに、二人は結ばれる事はなかった、という事……。





「……………」




写真たてに、写真を戻し、元の場所に置いた…。


写真たて越しの鏡には、『夏代子』にソックリな私が映っている…。




ーーー神様と人間の恋か……。





冷たいかもしれないが……


普通を好む私からすると、結ばれなくて正解だったんじゃないか、と思う。


だからこそ、『私』が今ここに居る……。


どこかのファンタジー小説から出て来たような、ロマンチックな恋。


それは、小説の中だからこそ、美しい物語として成り立つ……。


現実にはそんな事は成り立たない…。



鏡の中の『私』は、やはり、『夏代子』と、似てなどいない…。



『………銀狼に会いに行こう………』



彼にも事実を伝えなければならない…。


そして、この奇妙な物語を終わらせてしまわなければ…。



今夜は昨夜と違って、月が出ていない。


私は、犬神のいる社へと続く、真っ暗な田舎の一本道を、一人下って行った…。

















< 34 / 164 >

この作品をシェア

pagetop