送り狼
出逢いの夜

『………………』


誰かの声がする。


『…………お…』


うるさいなぁ…


『……真央…』


誰??



誰かの呼ぶ声で、目を覚ました。

いつもと違う天井がボンヤリとした視界に映り込む。

やがて、夏虫の鳴く声が聞こえて来て、ようやく寝ぼけた頭が状況を飲み込んだ。

そういえば、私、おばあちゃんの家に来てるんだった。

辺りは先程と変わらず真っ暗だ。

今は何時なのだろう??

時計を見ようと体を起こしたその時、



『…真央…』



やっぱり!!



私を呼ぶ声がする。

月明かりを頼りに薄暗い部屋を見回すが声の主は見当たらない。

両親が予定を早めこちらに来たのかとも思ったが、他に誰か居そうな気配はない。

…というより、居るわけがないのだから。

顔面から一気に血の気が引いて行くのが自分でも解った。


『何!?何!?この目覚めた瞬間からガクブルな状況は!?』


わずか3秒程でこの流れを理解した私の脳は、寝ぼけてなどいないようだ。

恐怖のあまり再び布団に潜り込んだ私に、

追い打ちをかけるように

また、あの声が響いた。



『真央……』




今度は、はっきりと聞こえる。



それは、何処かで聞き覚えのあるような声。

耳から聞こえてくるというよりは頭の中で響くといった感じだ。



『大丈夫だから……』



その声は優しく頭に響いて、何かを語りかけてくるようだった。




『……真央………』



これは一体、どういう事なのだろう。

恐怖心は拭えないが、なんだかとても懐かしい響きだ。

私は…多分、この声の主を知っている……。



私は、ゆっくりと布団から顔を出して、

硬く瞑った瞳を思い切って開いた!!



すると、



白く鈍い光が両目いっぱいに飛び込んできた!!









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