送り狼

「…真央…?どうした…?」


突然身体を硬直させた真央に異変を感じて

銀狼は真央の身体を自分から離した。


「真央…?」


真央はうなだれるようにグッタリとうつむいていて、

銀狼の言葉に反応しない。



銀狼の脳裏に不安がよぎる。



「真央っ!!どうしたっ!?返事をしろっ!!」



抜け殻のように力なくうなだれる真央の身体を

銀狼は激しく揺さぶった。



「……銀狼……」




真央の唇から彼の名が切なく紡ぎだされる……




「…銀狼……」



もう一度……





その響きは、とても懐かしい……





真央の様子がおかしい。




「…真…央……?」




彼女から紡ぎ出される響きに懐かしさを感じる。

銀狼はその響きを確かめるように真央の瞳を覗きこんだ…。




瞳と瞳が交わる…






「…夏……代…子……?」




銀狼の切れ長の瞳が大きく見開く。





「…夏代子…なのか…??」



見つめ返す彼女の瞳に生命が宿る…






数十年振りの再会……



長い間、二人を隔てていた時が今、

刹那的に交差する…。




皮肉にも、真央の唇から

夏代子の言葉が紡がれる…。



「…銀狼……」



「………」




銀狼は答えれない。

その変わりか、金色の瞳を切なく揺らす。


「…会いたかった…。ずっと…ずっと、会いたかった…」




そう紡いだ夏代子の瞳も揺れる。



「…………」




銀狼の金色の瞳が歪んだ…。






夏代子の冷たい指先が銀狼の頬に触れる…。



冷たすぎるその感触は、銀狼の長い間、降り積もった想いを彷彿させる…


銀狼自身、夏代子に言いたかった事は

沢山あったはずなのに

いざ、そうなると、想いが強すぎて言葉にならない。


言葉にならない分、

歪めた瞳と、その表情で、想いを伝える…。



「…銀狼……。ごめんなさい……。

 私を許して……」



瞳を閉じた夏代子の頬を

雫が幾筋も流れ落ちる…




再会の時は、僅かだったように思う。




怒りも、悲しみも、切なさも、今まで積んだ思い全てを無に帰すこの時が…



何よりも、銀狼の胸を熱くさせた。



銀狼は頬に触れる冷たい夏代子の手を静かに取り



そして、その指に優しく口付けた…。









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