お嬢様の事情その1

怨嗟

白松綾美は仮にも白松グループの跡取りであったから、幾つかの会社を保有していた。

子会社を使い、笠原グループより安く笠原の取引先に売っていった。

もちろんコストを下げた分品質は落ちるが、安さに取引先は飛びついた。

そのように笠原から次々と取引先を奪った。

しまいには笠原の商品をリコールまでしてやった。

綾美はその時点でかなり狂った歯車のように無茶苦茶で手段を選ばなかった。

学校に行くと静香の憂いた表情が見える。またその顔が綾美を苛立たせた。

噂が流れているのは承知の上だった。

泣き出した林檎をみて綾美は馬鹿みたいだと思った。

所詮、市民あがりの女が笠原グループという付け焼き刃で私に勝てるわけがない。

生意気な。

心の中でそう吐き捨てると少し気持ちがすっとした。

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