恋する吹奏楽部

「手に入れた。」
部活終了後。
美蓮先生と岡重先生が準備室にいない間にあの本をゲットした堤 春菜です。
この本の謎を解かなきゃ。
私が準備室の前で立ち止まっていると、
「あぁ、春菜。」
「!!!???」
「何してんだ?あぁ、その本。」
私は本をばっと隠す。
この本の持ち主、岡重先生が現れた。
「すいませんすいませんすいませんすいません!!!!!」
私が慌てていると岡重先生が笑い出す。
「いいよ、別に。それ、あげるよ。」
「・・・・・・・・え?」
「とりあえず、中入って。」
「え、あ、え、えぇ!?」
私はほぼ無理やり準備室に引きずり込まれた。
「その本のこと、知りたい?」
「え、あ、はい!」
「そうか。」
先生が顔をあげ、淡々と話し始める。
「その本の最初の著者は私の祖父だ。」
「岡重先生の・・・祖父?」
「そう。」
先生は本のページをめくる。
「私にも、祖父の書いた文の内容は理解できない。でも、私だって、いつもなにを書いているのかわからないんだ。突然頭の中に文章が刻まれる、それをこの本に書かなくては、っていう衝動が襲って来るからね、自分でなにを書いて来たかまったく覚えてないよ。」
「・・・。」
「この本がなんのためにあるのかはわからない。でも・・・・。」
「で、も・・・?」
「この本の著者になった瞬間から、次の著者に変わるまでは何があっても書き続けなければならない。でないと、、、」
「・・・?」
「楽園の呪いは解かれる。その呪いは決して解かれてはならない。楽園の呪いが解かれると、私たちは楽園を追放される。楽園喪失だ。」
私は先生の話をなんとなく理解した。
「楽園ってのは、音楽のことですね。」
「さすが春菜。読み込みが早いね。音楽といっても詳しく言えば吹奏楽のことだ。」
「吹奏楽にかけられた呪いをこの本が防いでるんですかね?」
「多分そう。私が思うにはこの本の内容、今、私たちの身の回りにある出来事だと思うんだ。私の祖父は未来を予想してたんじゃないかな。」
「そうなんですか?」
「この内容、他校の吹部の子と似てたり、ここの吹部の子と重なるんだよね。」
「へぇ・・・。」
「ま、これはあくまでも私の推測。今持ち主は春菜に変わったんだから、春菜の捉え方でいいと思う。一つだけ伝えておく。」
私は顔を上げた。
「これ、幻想未来予想図だから。」
「・・・。」
「この本の結末は春菜に書いて欲しい。」
「え・・・?」
「このことは私たちだけで収めておきたいんだ。」
「は、はい・・・。」
「結末を、未来を決めるのは、春菜だから。」
岡重先生が私をじっと見つめる。
「念のため、合宿にこれを持ってきて。」
「はい。」
「おっけー、じゃ、ほら、早く帰った帰ったー。」
「え、あ、さようならっ」
「おうおう」
岡重先生に無理やり、準備室の外にだされた。
「・・・。」
私は本を見つめる。
「この本、なんなんだろう。」
先生、そういえば蘭舞の人とも内容が重なるって言ったよな、そういえば。
「はーるなーかーえろー。」
階段の近くで二年弦バスの桜森 姫埜(さくらもり ひめの)が私を呼ぶ。
「うんっ、先に下降りててー。」
「おっけー。」
私はリュックに本を入れ、駆け出した。
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