恋する吹奏楽部

-堤宅-
「わかった。」
私は明日から合宿だというのに、本の解読に熱中している。
やっと一人わかったの。
25ページのこの文章。

-25------

二つの尻尾を揺らして木管を引っ張る。

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「姉崎先輩!」
これはわかったぞ。
二つの尻尾ってことはツインテールだよね。
でもって私たち木管を引っ張る木管パートのリーダーはアルトサックスの姉崎りりい先輩!
うーん。
だから何?って感じ。
姉崎先輩だと分かっても、姉崎先輩に何があるのかさっぱりだし。
このページは多分岡重先生のおじいさんが書いたものだろうし、もちろんその時代に姉崎先輩なんているわけがないし。
もー、わけわかんない。
私は本を手荒に机に放り投げ、ベッドに突っ伏した。
「・・・。」
一つだけ。
一つだけ気になることがある。
それは。
「わ、私も書いてあるのかな・・・?」
姉崎先輩っていう身近な人がここに書かれてあるなら・・・。
私だってなにか書いてあるんじゃないのかな・・・。
「・・・キニナル。」
私は本を手に取り、ベッドで寝転びながらそれを眺める。
別に私を見つけるとかそんなわけじゃないけど、自分の楽器だって気になるじゃん?
フルートのこととか書いてないかな。
ちょっとした好奇心だった。
ページをパラパラめくっているとケータイがなった。
吹部の次期副部長で、コントラバスの姫埜からのメールだった。

【春菜大変!明日の合宿、式舞も同じ日に同じ場所で合宿らしいの!たまたま日程が重なったらしいんだけど、なんかわざとらしいよね・・・。】

こんな内容だった。
式舞はあれね、女神って呼ばれる私たちと同じ年の女の子がいる強豪校。
うそ、信じられない!
たまたまにしても凄すぎる!!
明日、東関東エリアの全国候補の強豪校三校が同時に合宿だなんて!!
やばい!
女神にも会えるかな!?

【まじで!?やばいねー!!女神様、一目でいいから見てみたいな!】

返信するとすぐにメールが返ってきた。

【何呑気な事言ってるの!?合宿でこっちの強さ見せつけないと!】

さすが副部長・・・。
あ、この本に姫埜の事も書いてたりしないかな?
あとで探しとこ。
姫埜におやすみメールを送って、荷物の確認を済ませ、寝る準備も完璧にしたとこで、再びベッドの上の本を広げる。
「・・・・・!?これは!?」

-?------

弦を自由に操る桜散りぬ。

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・・・姫埜の事?
姫埜はコントラバスだけじゃなくてハープもひいている。
最近美蓮先生に勧められてヴァイオリンまで始めた。
弦をそれこそ自由に操ってる、名字は桜森。
姫埜の事かも。
じゃあ、私は!?
何ページか忘れたけど、なんかすごく大事そうな事が書いてあるページがあった。
内容は

-?------

女神と出会い、未来を変える。

この楽園に春を。

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明日は待ちに待った合宿。
もういいから早くねよう。
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