卑怯な私

遊人side




「遊佐、こっち頼む」


「はい!」



今は山梨で勤務中。



あの時、北海道への転勤を取りやめた訳ではない。



優子の言うとおり、俺はちゃんと北海道へ行った。



その後何回か転勤を繰り返した。



断らなかったのは、全国各地を飛び回っていれば行方不明の優子に会えると思ったからだ。



淡い期待を抱いて転勤を繰り返したのに、一度も会えたことはない。



それでも一度も希望を捨てたことは無い。



「遊人、明日帰省するんだって?」


「そうっす。明後日命日なんで」


「なんだ、愛しい人でも失ったのか?」



お昼休憩をしていると、段々集まってくる人だかり。



「違いますよ。大事な仲間が帰ってくるのを待ってるんすよ」


「はぁ?死んだ人は還ってこねぇぞ?」


「俺は“帰ってくる”って言ったんすよ」
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