卑怯な私
「・・・・・・ごめん」
2人が無邪気にボートを漕いでいる姿を眺めながら、呟いた。
「いや、俺こそごめん。高校生になってまでウザかったよな」
「そんなことないよ」
そんなことない。
ただ私は、“兄妹”という言葉に反応したんだ。
「覚えてる?昔は何処に行くにしても何時も手を繋いでた」
「覚えてるよ」
「それが何時からか、手は繋がなくなった」
「そうだったな」
本当は繋ぎたかった。
でもね、繋いだら私の気持ちが翔樹にバレてしまうんじゃないかって思うようになってた。
手からドキドキが伝わって、バレてしまうんじゃないかって怖かった。
だから私から翔樹の手を放した。
「もう繋ぐことはないんだね」
「そうかもな」
そこは肯定してよ。
じゃないと益々諦めつかなくなるじゃない。