腹黒王子と意地っぱりガールの場合。
ここは中高一貫校である、私立茗稜学園の高等部。

空が青く、適度な風も吹いていて、非常に日和がいい今現在は、生徒たちが各々昼食をとる昼休みだ。

そんななか、生徒会執行部会計の職につく東堂 あかりが所用を済まし、中庭のそばを横切って校舎に戻ろうとしていると……中庭からかすかに聞こえて来たのは、愛の告白の言葉で。

不可抗力で見てしまったそのふたりは、学年のなかでもかわいいと評判の女の子と、……よく見知ったアイツだった。



「なんであんなヤツが……」



立ち止まってそのふたりを見ながら、小さく呟く。

見知った相手はこちら側に背を向けているため、顔は見えない。……が、どうせ顔色も変えずに、あのムカつく微笑を浮かべているのだろう。

普通の音量の会話はさすがに聞こえなかったが、やがて女の子は落胆の表情をすると、ぺこりと頭を下げてからその場を小走りで去って行った。


……断ったのか……。


そう思っていると。



「覗き見なんて、趣味悪ぃな」

「ッ?!」



アイツが、突然振り返って声を掛けてきた。
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