白いジャージとオレンジジュース
「私も、話したくなかったんじゃ。だが、今日ここに来て良かったと思ったよ。ここにいる若い皆さんが、真剣に私達の話を聞いてくれとる。ありがとう」
82歳の男性が、腰を押さえながら立ち上がる。
深々と頭を下げてくれた。
「つらいことはいろいろある。勉強だって、受験だって、クラブ活動だって大変だと思う。うちの孫も、いつも悩んどる。でも、悩めるってことが幸せだと気付いて欲しい。好きな人とうまくいかないのは悲しいけれど、好きな人が戦争に行ってしまうことを思えば、まだましだと思えるじゃろう。お父さんやお母さんがいつも口うるさくて嫌だとよく聞くが、お父さんが戦争に行ってしまったらどうなる?戦争中は、口うるさく言って欲しくても誰もそんな余裕はなかった。生きることに必死だった。食べるものもなかった。言いたいことはたくさんあるんじゃが、説教になってしまうからこのあたりでやめておくな」
伝わった。
ゆっくりとみんなの目を見て話してくれた。
ちゃんとみんなに伝わってる。
俺にはそう見えた。