三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
「こんばんは。おじゃまします」
  と挨拶をして楓駕(ふうが)は菊邑(きくむら)のお店のガラス戸をガラガラと開けて店内に入った。尚、店内には豪華な活け花が活けてあり、古風な感じの調度品で統一されていて、流石に高級科亭とあって落ち着いて中々上品な雰囲気だった。




  間もなくすると髪の毛をアップにして小菊を全体に散らした柄の着物を粋に着こなした女将(おかみ)が現れた。
「いらっしゃいませ。どうぞ更科(さらしな)さまが『鶯(うぐいす)の間』でお待ちでございます」
  と女将が丁寧にお辞儀をしながら言うと、ゆっくりと顔を上げ紫苑の顔を見て一瞬ビクリとしたように目を見開いた。



  そして
「あら?!紫苑あんたも一緒だったの?」
  と言うと女将は明らかに驚いた表情をした。




「ええ。千菊(ちぎく)お久し振り。元気だった?」
  と一言言うと紫苑は怪訝(けげん)な顔で自分の顔をじっと見つめる、親友の顔を凝視した。
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