あの加藤とあの課長*SS集

俺のお姫さま

陽萌を初めて見かけたのは、大学4年の梅雨頃だった。




「ごめんねー、湊! 彼氏が関係切れってうるさくて。」



言葉とは裏腹に、満面の笑みで俺にそう告げた、名前すら曖昧なケバい女。

何度か寝た気がするんだけど。



「しょうがないじゃん、お幸せに。」

「ありがとー!」



よりによって、大学内のカフェテリアでそんなこと言うか…? 普通…。

周りの視線が痛いったらありゃしない。


居たたまれなくて、俺は逃げるようにカフェテリアを後にした。



「…はぁ。」



なんか、我ながら馬鹿馬鹿しい。

就活に追われながらも、女と関係を持つことを止めない俺。


最終的にはさっきみたいに離れていくのに。


次の講義まで1時間、帰るほどの時間もなければ、どこかをぶらつくほどの時間もない。

(図書館…とか、行ってみるか。)


柄じゃないけど、居心地は悪くない。



俺はノロノロと図書館に向かった。
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