あの加藤とあの課長*SS集
嫌がるわけでも、怒るわけでもなく、ただただ不思議そうに問う。

(声まで可愛いとか…。)



「…君さ、電子辞書とか使わないの?」

「電子辞書…?」



そう言った彼女は、至極不思議そうに首を傾げた。



「だってさ、電子辞書の方が楽だよ? 早いしさ。」



片肘をつき、手の上に顎をついてそう言う。

彼女はチラリと紙辞書に視線を落としてから、俺に視線を戻してやんわりと口を開いた。



「いいんです、紙辞書の方が分かりやすいし、ためになるんで。」

「…ふーん。」



それは確かに、一理ある。

けど、紙辞書って重いし持ち運びに不便じゃない?


それを彼女に告げると、彼女は笑って言った。



「紙辞書を持ち歩くなんて、さすがにしませんよ。勉強以外ではケータイ使っちゃいますから。」



その笑顔が、すごく綺麗で。



「紙辞書は持ち運びに適さないので、使うのは基本家か、ここです。」

「…図書館、結構来るの?」

「わりと来ますね。」

「…そっか。」
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