あの加藤とあの課長*SS集
増田

私の好きな人の好きな人

一目で好きになった。
まさしくこれが、一目惚れ。



「あ、の、課長!」



階段の踊り場で呼び止めると、彼は嫌な素振りどころか、欠片も感情を表に出さずに振り向いた。

冷たい瞳に思わず腰が引ける。



「なんだ?」



本社に上がった翌日、なんてスピードだと自分でも感心してしまうほど。



「ひ、一目惚れしました! つ、付き合ってください!」



でも、今がチャンスらしいから。いけるときにいっておかないと…!

彼は片手を顎に添えると、少し考えを巡らせた後、口を開いた。



「増田さん、だったか。」

「は、はい!」

「……構わない。」

「……え!?」



い、いいの?



「なんだ、えって。」

「いや、その…。」



意外、だったんです。

だってまさか、OKしてくれるなんて、夢にも思ってなかったから…。



「あ、今晩空いてますか!?」

「…仕事が終われば。」



宙に視線をさ迷わせてから、そう答えた。



「夕飯とか、どうですか?」

「分かった、空けておく。」



そう言って、課長は階段を降りて行ってしまった。
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