飛ばない蝶は、花束の中に


話を戻しにくくなった。

波打つような苛立ちは、行き場を無くし、私は自棄を起こしたように、焼き菓子に手を伸ばした。


綺麗なガラスの器に入ったプリンは“雅”の作ったものだろうと。

食べるのは腹立たしい、と。

それが美味しかったりしたら、居たたまれない、と思って、手を出さずにいたけれど。


だんだん乾いていく表面に、ちょっと可哀想になっていた所だった。




お湯が沸く音がして“雅”は花とナイフを置くと、パタパタとキッチンに戻る。


代わりに座った“タカノ”が、いちごミルク色の花を、つまみ上げた。





「そういう、好きなんだ?」


小さく、視線を花に向けたまま呟かれた問いに、私は、バターの香りのする焼き菓子の端を、黙ってかじった。





「凱司は…受け入れないよ?」





…この人は、私の何を知っていて、こんな事を言うんだろう。

お兄ちゃんの何を知っていて、今、言うの?




< 33 / 328 >

この作品をシェア

pagetop