飛ばない蝶は、花束の中に


大きな砂山は、砂山以外の物に進化する事はなかった。

例えば、お城とかに。



満潮の時刻が近付くにつれて、たくさんトンネルを掘った砂山は、徐々に波に浸食されて、崩れがちになった。



「…そろそろ帰るか?それとも花火でも買ってくるか?」


砂だらけの私に、お兄ちゃんは大きなタオルを掛けてくれた。

潮風は、少し冷たい気がする。

風邪を引く、と掛けてくれたタオルは、お兄ちゃんの家の匂いがして、暖かい。





「…今日…帰らなきゃ駄目?」

「…………………」




私は。
お兄ちゃんが好きだ。


「夜には“タカノ”も帰って来るんでしょう?」



“雅”を可哀想だと思う気持ちもある。


でも。

だけど。



やっぱり砂だらけの、お兄ちゃんの。

新しく入った薄墨の蛇に、そっと手を掛けた。



< 83 / 328 >

この作品をシェア

pagetop