君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

「会社の近くでいいか? それともこのへん?」

「会社の方行きましょうか。あっちの方がお店多いし」

「了解」



建物の正面の駐車場から車を出す。

よくこの車を警察署に堂々と停められるなあ、と感心してしまう。


ふと思いついた。



「解決祝い、しましょうよ」

「なるほど」



私たちを悩ませていたものが、たて続けに消えたのだ。

お祝いをダシに飲みに誘ってみても、罰はあたらないに違いない。



「今日は車ですもんね、金曜は?」

「早く帰るのは、無理だな」

「来週は」

「出張」

「……」



腹立ちまぎれに、仕事と結婚したらどうですか、と言ってやる。



「なんだ、一緒に大事にしてくれるんじゃなかったのか」



かあっと顔に血が上った。

信じられない、こんなときに持ち出すなんて。


にやにやとこちらを見る顔は、不敵で、楽しそうで、腹立たしくて。



「この…鬼!」



悔しくてそれしか言えずにいると、ふいに彼が言った。



「お前のも、教えろよ」

「え?」

「大事なもの」



そう、私の大好きな声で言った。




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