君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「なんだ、順調なんじゃん」
「まあ、できうる中ではベストな流れで来てるね」
彩と久々のランチは、私の仕事が押したせいで、近場のカフェになった。
「仕事じゃないよ、新庄さんとの話」
ああ、とうなずいて、フォークを動かす。
「あれ以降、笑顔を見てない」
あれ、というのは、二週間前のプレゼンのことだ。
「そうなの?」
「というかほとんど会えてない、向こうが別の仕事に追われてて」
「多忙な人だねー。まとめ役にはどっしり座っててほしいけど、チーフじゃ仕方ないか」
そう、うちの会社で言うチーフとは、あくまでチームリーダーであってマネージャーではない。
必要な時には、自らプレイヤーになるポジションのことだ。
「高木さんの仕事が予想外にヘビーで、そのサポートに入らざるを得なかったんだよね」
今の新庄さんはまさにプレイヤーで、打ち合わせやらロケハンやらと飛び回り、まず席にいない。
「出先からでもレスポンスの速さ、半端じゃないけどね」
「最高の上司じゃん」
「そうなんだけど」
会社にはいなくても的確な指示は飛んでくるし、私ではどうにもならない根回しなども、さらりとしておいてくれる。
いったいいつ休んでるの? というくらいの働きぶりだ。
でもやっぱり、直接会って話せた方が速いし、心強い。
「早く向こうのメドが立たないかなあ」
つい、ぼやいた。