君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

翌朝、定時に出社すると、先に来ていた新庄さんが怪訝そうな顔をした。

大丈夫なのか、と目顔で聞いてくるので、曖昧にうなずく。


結局、あの後は眠れなかった。

明かりを消すのも怖くて、車の中で寝たのをさいわい、寝るのをあきらめた。



「こちらが来場者数の速報です」



プリントアウトを全員に配布する。



「確報と前年比はまだ出ていませんが、見込みで百二十%は確実で、ブース誘導率も八割を超え、来期の継続出展を充分狙えます」



よどみなくしゃべる自分を、どこか遠くに感じる。

自動操縦されているみたいに、身体が勝手に動いてくれる。


定例会が終了した後、一息つきたくて給湯室へ向かった。

流しでカップをすすぎ、紅茶のティーバッグを取り出そうとしたところに、新庄さんが入ってきた。



「大塚、お前、大丈夫なのか」

「えっ」



びっくりした。

いつもどおり振る舞えていると思っていたんだけれど。

< 59 / 126 >

この作品をシェア

pagetop