君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

目が覚めると、部屋は真っ暗だった。


枕元の携帯で確かめると、夜の11時。

四時間ほどぐっすり眠っていたらしい。


とりあえず、週末から続いていた身体の疲れは、なんとかとれている気がした。


目が慣れると、カーテンの外から入る街灯の明かりで、少し物が見える。

部屋の中も外も、静まり返って、物音ひとつしない。


ふいに全身が震え出して、びっくりした。

なだめようとしても止まらない。


なんだこれ。

自分の中で、別の自分が叫んでる。


──怖い。


明かりをつけたいけれど、動くと誰かに見つかるんじゃないかという、理屈の通らない恐怖がそれを阻んだ。

そのとき、はっとした。玄関のドアの向こうに人の気配がする。

誰かいる。


息を殺して、音をたてないように携帯を引き寄せて握りしめた。

鍵もチェーンもかけてある。

大丈夫、と自分に言い聞かせる。


耐えがたい間の後、ピンポン、とチャイムが鳴った。



< 64 / 126 >

この作品をシェア

pagetop