カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

言葉少なに、「アイスコーヒー」と店員に告げた神宮司さんに、多少この間の告白もあって緊張する。


二人きりのこの空気に、なにを話せばいいかわからない。
ていうか、休日に二人になるなんて初めてなんだから仕方ないわよね……?


「な、なにか用ですか」
「『用』っつーか! ……昨日、なんもなかったのか?」
「き、昨日?」


まさか! 昨日私が要とお酒を飲んで、一晩明かしたって知るはずないわよね?!


核心をつかれた気がして動揺してしまう。
つい、パッと目を逸らしてしまった私の視線は、落ち着かずに定まらない。


もしかして、森尾さん? そういえば彼女、別れ際に言ってた。

「神宮司先輩には言わないほうがいいですかぁ?」って。

別に事実だし、神宮司さんとは付き合ってるわけじゃないし。
だけどやっぱり、こんなことを知られるというのは平常心ではいられない。


下手になにを言っても自分の首を絞めるだけかと、口を噤んだ私を神宮司さんは一度も目を逸らさずに見てる。
いよいよ沈黙に困り果てた頃、神宮司さんが口を開いた。


「……や、無事ならいい」


「無事」……? あ、もしかして、電池も切れてて連絡がつかなかったから、なにかあったのかと思って?


深読みし過ぎた、と気づくと、途端に力が抜けてしまう。
そこへさっき頼んだアイスコーヒーが運ばれてくると、ようやく神宮司さんの目線がそちらに移って解放される。

細長いグラスを上から掴むように持つ、神宮司さんの手が何気なく目に入った。


ほんと、『男らしい』手だ……。
厚みもあって、大きくて。グラスを握れば簡単に割れちゃったりして……。


それに比べてあいつの手――。

同じ『男』でも、こうも違うものなのね。
別に華奢とか、女性っぽいとかそういうのを感じさせるわけじゃないけど、神宮司さんと比べると線が細いというかなんというか……。


「じゃあ、行くか」


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