カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「ははっ。じゃあ、オレ、“奪われた”?」
「さあ。実感ないわ」


やっぱり、いまさら素直になんかなれなくて。
可愛げのない言葉が、なにより早く私の口をついて出る。


「くっ」と耳元で笑い声が聞こえたら、彼の手がするりと私の顔に伸びて来て、キスされた。
そうして、離れた唇から聞こえた言葉。


「――奪われたよ」


そんな私にいやな顔もしないで、むしろなんだかうれしそうにする要がよくわからない。


「あ……ボールペン、持って来たんだったわ」
「あー……いや。いいよ、そのまま使ってても」
「あれはあなたの手の方が似合うから。それに」


横目でデザイン画を見て、くすっと笑って言った。


「これから、私に似合うペンが出来そうだし」


バカみたい。こんな惚気た会話を二人きりでしながら、何度も唇を重ねるなんて。
でも、絡み合う手が本当に心地いいから。


一生に一度はこんな甘ったるい関係も、悪くない。




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