カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―


今日はとぼとぼと肩を落とし、力ない歩調で、いつもの道を歩く。
喫茶店の看板が目に入ると、立ち寄ろうかどうか直前まで悩んだ。

店の前で足を止め、格子の窓越しに店内を見ると、そこはいつもと変わらない時間が流れていた。


もしかしたら、この日常の空間に飛び込んでしまえば、いつもの私に戻れるかもしれない。

それでも、今日の私はなぜかひどく落ちていて。

この空気にすら馴染めなさそうだ、というのと、ここでまた“あいつ”に遭遇したら、それこそもう立ち直れない気がする。

きっと、あいつ――要は、こんなふうに気落ちすることなんてなさそう。
いつでも自分を持っていて、流されなくて。だから、仕事も自分のしたいものだけを厳選して。結果、そうして生み出した商品たちが支持される。


それに比べて今の自分は……?


きっと、後輩には自分の物差しでなんでも測る、厳しすぎる年増の女のように見られて。

年齢が邪魔をして、いままで努力してきたものすらも盾にはならなくなって。

自分の存在価値が、仕事でもプライベートでもないように思えるだなんて。


そんな暗い思考に初めて陥ったのは、もうずっとずっと昔のことだと思い出して、そのまま喫茶店をあとにした。



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