カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

毎日のようにここを訪れてはいるものの、こうゆっくりと商品を見ることってあまりない。


自社の商品も、ライトを照らされて綺麗に陳列されたものを見ると、また違って見えるものなんだな。


国産のものを一通り流してみた次に、舶来の筆記具がずらりとメーカーごとに並んでいた。

ふ、と視線をショーケースの中の一番下の段に落とすと、昨日喫茶店で見た、ドイツのブランドがあった。

私はしゃがみこんで、ガラス越しにそれをじっと見つめた。
黒い軸や、白い軸。太めのボディもあれば、細いもの……シルバー部分が光を受けて、いっそう輝きを増して見える。

ゆっくりと順番に見て行くと、昨日と同じボールペンに辿り着いた。


やっぱり一万円以上するんだ。


プライスを見て、想像通りの値段に納得する。
今このショーケースの中のような輝きを、あの喫茶店でも放っていたのだから、安価なものじゃなさそうだとは思っていた。


「なにかお探しですか?」


気付かぬ間に神野さんが私の前に立ち、にこにこと冗談めいて接客をしてきた。


「いえ。特に予定はないの。ごめんなさい」
「そうなんですか。珍しく阿部さんが真剣に見ていたものだから、なにか探しているのかと思っちゃいました」
「……最近、このメーカーのボールペンを見掛けたものだから。ついそれを思い出してみただけよ」


私は立ち上がり、指をショーケースの上について、それを眺めた。

不思議なもので、今までなんとも思ったことの無いペンが、急に特別な存在感を醸し出している気がした。


「あ、そうだ。阿部さん。あの……」
「はい?」
「この新商品を入れる時に、以前からお話していたダーマトグラフの定番色を縮小したいんですけど……」
「ああ、そうでしたね。仕方ないわ。あの辺りはうちもあまり出なくて……。新商品入荷したら、引き取りますのでまとめて、伝票作っといて貰えます?」
「はい。ありがとうございます」

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