恋する季節 *- confession of love -*


「……結ぶって、ただ絡ませればいいわけじゃねぇんだろ? つーか、小指って書いてあるけど、なんで全部の指に……」
「小指だけに結ぼうとしてるんだけど、なんか……うまくいかなくて」
「おまえ、不器用だからなー。糸が短いんじゃねぇの? 俺のも貸してやるから繋げて長くすればやりやすいだろ」

そう提案した大和が、美琴の糸と自分の持っていた糸の端を結びつける。
三本ともそうしてやったが……それは見る見るうちに美琴の指先にごちゃごちゃに絡まっていってしまい。

どう考えても余計な提案だったと大和が後悔して肩を落とす。

「多分それ無理だから一度解け。……ほら、解いてやるから手貸して」

美琴の手に触れるチャンスが、Nランド内にはこんなにもあるのかと感動しながら、でもそんな事は顔に出さずに平然を装いながら大和が言う。
大和が少し緊張しながらも、美琴の隣に席に移ると、ゴンドラがわずかに傾く。

隣に座った大和に、美琴は戸惑いながらも三色の糸の絡まった手を差し出した。

彩乃がやけにキスを強調したせいで、美琴も緊張していた。
大和は男だけど、自分の怖がる事はしないいい人。
そんな式が頭の中に出来上がっているにも関わらず緊張するなんてどういう事だろうと、胸の高鳴りに疑問を抱いている美琴の手に、大和が触れる。

美琴を怖がらせないように、そっと。



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