絶滅危惧種『ヒト』
午前九時。桜小路家のインターホンが鳴った。


「あら来てくれたのね」


綾乃は玄関まで訪問者を迎えに出る。


「お邪魔します」


入ってきたのは梓だった。


昨日の昼食のときに、みんな死んじゃうかもしれないという話になり、

綾乃が死ぬ前に息子の彼女と買い物に行きたかったのに、という願いを受けて、梓が付き合う事にしたのだ。


今日は日曜日。

昨日多くの同級生が亡くなっているから、今日は一斉にお葬式があるらしいけど、

誰のに参列すれば良いか分からないから、学校が後日合同で開催してくれるらしいので、それに出席することにした。


もうすぐ試験で、その後春休みなのだけど、おそらく大半の生徒が死んでいるから、授業はもうないだろう。


「おはよう。梓大丈夫か?」


聖人が心配そうに出迎えてくれた。


クラスメイトが全員死んだのに、自分と聖人はまだ生きている。


「ワクチンが効いてるみたい。みんなまだ元気だよ」


「そうか」


実は昨日の別れ際に、会えるのもこれで最後かもしれないと、二人ともが思っていたから、

今こうやって会えたことが、嬉しくて仕方なかった。



「じゃあすぐに出かけましょう」


急いで出かけないと、そうこうしているうちに、発病してしまったら、夢が夢で終わってしまうから、綾乃はすぐに出かけたかったのだ。


「は、はい」


梓は笑顔で答えた。
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