絶滅危惧種『ヒト』
「世界中にはまだ日本人がいると思うけど……でなきゃコイツが最後の純粋な日本人になっちゃうんだな」


聖人は梓の膨らんだお腹を見つめる。


梓のお腹の中には、あの日の聖人の子供が宿っていた。


妊娠が発覚してすぐに、両親に叱られたけれど、それこそ最後の日本人になってしまうかもしれない子供を、梓は絶対に中絶することは出来なかった。


最初は反対した父も、今では応援してくれていて、慣れないアメリカで仕事をしながら、梓のことを養ってくれている。

それに対して聖人は負い目に思っているらしいが、梓としては聖人にはちゃんと医者になってもらいたいのだ。


実はアメリカ政府から、梓は生活を保障してもらっているから、お金の心配はない。

それでも聖人にとっては、自分が守ってやりたいという気持ちが強いのである。


「俺ももうすぐオヤジかぁ……。イマイチ英語分かんないけど、早く仕事を始めなきゃ、オヤジがプー太郎じゃ、コイツも安心して生まれてこれないよな」


聖人は梓のお腹を撫でる。


「まだそんなこと言ってる。うちのお父さんがちゃんと養ってくれるって言ってるんだから、聖人はちゃんと大学に進学してお医者様になってよ。ね?」


「でもさぁ……」


「でもじゃない! ちゃんとお父様とお兄様の後を継ぐこと。いいわね」


梓はキッと睨んだ後で、すぐに満面の笑みを浮かべる。


「はいはい」


聖人はそんな梓を抱き寄せ、そして二人は甘い口付けを交わした。




絶滅危惧種『ヒト』 完

< 223 / 223 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

生贄投票

総文字数/232,100

ホラー・オカルト827ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『ヤングマガジン海賊版』にて、2015*12*18より、コミカライズ連載中。ある日突然、クラスメイト全員のスマートホンが、生贄投票という画面になった。
呪信メール

総文字数/82,119

ホラー・オカルト495ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
真夜中のおりおん☆アプリ大賞。 大賞受賞作品。 携帯電話が落ちていたら…… あなたなら拾いますか? それが都市伝説で囁かれている、呪われた携帯電話かもしれないのに……。
呪島~ノロイジマ~

総文字数/196,501

ホラー・オカルト716ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
卒業旅行で訪れた島。 一人……また一人。消えていく仲間たち。 そこは呪われた島。生きて出ることは許されない……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop