彼の者、魔王と云ったそうな

其の者、火花を散りし語れども




「なかなかの身のこなし、見事なりっ」

「そら、おおきに」



木棒でなく鋭き刃を交え、キィンッシャリッと金属の響き合う音に酔いしれている、この二人。


山ン本の向ける刃は一突きが確実に、そして見事なまでに急所を狙う。

縁は対称的に流れるように刃を振るい、怪我をさせず降参させようと一閃を描く。


押して、引いて、交じりあい。


互いに譲らぬ交戦が、いつの間にやら敷地を飛び出し雑木林の中で振るわせていた。



「一突きが抉いどすなあ。山ン本はんは剣術でも習うてましたんやろか」


「少しかじっただけの、ことよッ!」



左肩を狙った振り下ろし。シュプッと微かな音をたて、多量の鮮血が噴き出し流れる。


「っ……」鋭痛の衝撃に肩をおさえようと、左手だけで刀を構え右手を左肩に押さえる縁。

縁の額にはべっしょりと汗が滲み出ている。

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