スキというキモチのカタチ。
このはが勤める会社の近くにバーがある。


迷うことなくすんなりと店に辿り着いた。


「じゃ、俺たちはここで。またな、川藤。」




駅に近かったため、高橋夫婦もここまで一緒に来ていた。


「あの…。」



別れ際、香織がおずおずと口を開く。

「余計なお世話かもしれませんが…。

自分のキモチに素直になること、大切ですよ。お話聞いてたら、川藤さんはこのはさんのこととても愛されてますよね。」



カッと顔が赤らむのがわかる。


「色々ご事情はおありなのかもしれませんけど…同じ女として素直にキモチを受け入れて欲しいんじゃないかと思いましたので。」



図星だった。




スキよ。



そうこのはが口にするたび、素直に受け入れたい自分がいるのにブレーキをかける自分もいる。


受け入れたい。


でも受け入れられない。



そのジレンマに悩まされているのだ。


但し、これは彬だけの問題。


このはには関係ないのだ。



「ありがとう。
前に進まなきゃならないのはわかってるんだが…。何しろ赤ちゃんの時から知っている子なんだ。
いきなり男女にキモチを切り替えることが難しくてね。」



俯き加減に言葉をつなぐ。



「今日はお前ら夫婦に会えてよかったよ。
時間があればまた会おう。」


顔をあげるとニッコリと笑う高橋が居た。


「次に会う時はこのはちゃんも一緒に。
頑張れよ、川藤。」


短く手をあげ、夫婦が立ち去る。




何かスッキリした気分だった。

ツキモノが落ちたみたいな。





少なくとも店に入るまでは…。



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