*Pure love*
六章 夏祭り  願い

 夏休み.長くも短い休みが始まった.
全国県民にとって嬉しい長い休み・・だけれども

「はっきり言って,夏休みのいいところってたっぷり寝られるとこしかない気がするー.
課題は大量だし,休み明けの実力試験とか面倒くさーい」

 花香が両手を広げて寝そべった.
 中にはこんな考えの奴もいる.

「またまたー.どうせ郁馬とどっか行って遊ぶんでしょー?」

「それはそうだけどー」

 夏休みの計画を立てるのを手伝って!と呼ばれたのに,花香がだらけて一向に進まない.

「あーあ,校外学習までさっさと過ぎてほしいなぁー.早く校外学習行きたい」

 私たちの通う学校では,八月の第一週に二年生だけ校外学習がある.一年生は春に遠足,三年生は冬にスキー教室と,別で各学年行事がある.行く場所は年ごとに異なり,今年の二年の校外学習は箱根となっている.

「楽しみー.今年は箱根だから,芦ノ湖のフェリーに乗れるんだよね.」

 それに…織本君とも会えるし.小さく胸が鳴った.

「全く.楽しみなことより宿題のこと考えてほしいわ」

 振り向くと花香のお母さんがお盆を持って立っていた.

「はい,アイスティー.杏樹ちゃん,おばさんはそろそろ仕事だから.お昼は冷蔵庫に入っているサンドイッチを食べてね」

 頷くと,いってきます,と部屋を出て行った.


「ねぇ,杏樹.これ」

 お母さんがいなくなったとたんに、テーブルの下からプリントをだした。
 花香が取り出した一枚のプリントには、もうすぐある夏祭りについて書かれていた。

「小学校の頃に行ったの覚えてる?」

「うん、屋台とかいっぱいあってさ、それだけでも楽しめたよね」

 私たちが住んでいる地域の夏祭りは、駅に近い大きな公園で毎年行われる。
 盆踊りはもちろん、屋台がひしめくように並び、花火も上がるので、夏の一大イベントとして年齢を問わずとても人気が高い。

「去年は忙しかったけど、今年なら行けそうじゃないかな?」

「でしょ、だから行かない?郁馬とか誘って。多分そうしたら…織本君達も来るんじゃないかなぁ?」

 花香がニヤッと笑う。
 私の顔が反応するのがわかった。

「もう、からかわないでよね!」

「ふふふ」

 花香をバシバシ叩きながら抗議する。
 でも、織本君に会えるという期待に胸が踊ったのも事実。

「杏樹、浴衣まだ着れる?あの綺麗な朝顔の模様の。どうせなら着ていこうよ」

「そうだね。じゃあ花香も着ていこうよ」

「もちろん」

 夏休みの新しくできた予定。私たちはそれに胸を踊らせたのだった。

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