*Pure love*

京太side 告白


「ねぇ、岸さんってよくない?」

テスト後、やっと終わったと寝不足の頭を休ませる。その時に声をかけられたので、頭がボーッとした状態で聞き直した。

「なんだよ」

「いや、だから岸さん。可愛いし性格もよくない?」

そうか?眉を潜める。

岸と言えばこの間箱根で佐藤と同じ班のやつだった。
その時顔見て、まぁ整ってる方に入ってるかもなとは思ったけど、晃太にアピールしているのバレバレだったし、多分そんな性格よくない。
それより、断然佐藤の方が性格いいから…なんて言えない。

「俺はどうかと思うけど」

「えー、でも結構俺の好みに当てはまるんだよな」

あっそう、軽くいなす。そんなのに興味持つくらいなら佐藤のこと見ろよと思ったが、それはそれでこっちが困るので、心のなかに閉まっておいた。

 ***

それから何日かたって、晃太がいつもの電車で来なかった。理由は寝坊。晃太らしくないなと内心首をかしげる。
放課後の部活前、晃太に「用事があるから、先に行って」と言われたので、ちょっとトイレに寄った。

トイレから出ると、佐藤が階段を一目散に登っていくのが見えた。気になって後を追う。一階ずつ見ていったけれど佐藤はいなかった。

まさかと思って最上階まで登ると…いた。体育座りで顔を埋めている。

「佐藤?」

声をかけると、驚いた顔をして、桜田君?と呟く。
佐藤の顔が泣いていることに動揺する。

「あっ、取り込み中だった?」

って違うだろ!慌てて取り繕った言葉に自分で突っ込んだ。
顔を窺うと、大丈夫、と言ってハンカチで涙を拭き取っている。
そのままストンと横に座った。

「何かあった?」

あえて、顔を見ずに尋ねる。

「……あのね、織本君が…妙ちゃん…岸さんと付き合い…始めたんだって」

表情がこわばった。晃太が…岸と?

「先週かな….岸さんに頼まれてラブレター代わりに渡したの.そしたらさ,今日二人に織本君がそれでOKしたって聞かされてさ」
佐藤が言っていることに思い当たる節がある。
ちょっと前に、晃太がやけに嬉しそうにしてたのを覚えていた。
まさか…それが?

「結局、全部私のせいなんだ。好きって言えなかったのに、友達の告白を手伝ってるし。バカでしょ」

誰かに,そうだね,って言ってほしい。その気持ちが透けて見えたけど,そんなこと言えない。言えるはずないし思えない。
ただ佐藤の頬に涙が伝う。

「はぁ、自分に呆れちゃうや」

 その言葉で,プツンと自分をずっと制御していたものが切れた.


土砂降りの雨音の中、佐藤を思いっきり抱き締めていた。
ピタリと泣くのを止めて、すっごく硬直している。

しばらくして離すと、驚きと戸惑いと困惑とが入り交じった顔をしていた。そして

「ごめん、黙っていようと思ってたんだけど」

ここまで言ったら、もう後には引けない。

「俺、佐藤のこと好きだから」

えっ。目を大きく見開かせながら、佐藤が小さく呟く。

「でも…でも私…」

「佐藤が晃太のことが好きなのは知ってるよ。ずっと前から。ゴールデンウィーク明けくらいからだろ?」

さらに驚いたように、目を大きくした。下を向いて続ける。

「でも、佐藤をこんなに泣かすなんて、俺、耐えきれないから」

そこで一息ついた。

「別に今告白したからって付き合ってくれって訳じゃないから。ただ俺の気持ちとして受け止めていてくれればいいから」

言い終わって佐藤の顔を見ると、びっくりし過ぎたようで、涙は止まっていた。

無理やりかもしれない。
ふっと笑顔を作った。

「ほら、もう泣き止んでる。早く行かないと」

じゃあな、後ろを向いてそのまま走り去る。

今告白したのは結果的に佐藤を困らせることになったのかもしれない。

それでも……泣いている佐藤は見てられなかったと言えば言い訳になるのだろうか。

佐藤が直ぐに戻ったのかどうか、気になったが後ろを振り返らずに走った。


next…
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