お熱いのがお好き?
男はそう言いながら、麻紀にコーヒーの入ったカップを差し出した。


温かいカップを受け取りながら、男の柔らかな語り口に、麻紀は安心感を覚えた。



「昨夜も言ったけれど、麻紀さんは本当に酔っていたから、覚えていないだろうね。
俺はオザキって言います。電気工事の仕事をしてます。

親父の会社だから、一応肩書きは専務だけどね。
夏の休暇を利用して北海道を一人でツーリング中なんだ。

俺、子供の頃から捨て猫や巣から落ちた鳥のヒナを見ると、つい拾っちゃうんだよね。

でも、女のヒト拾ったのは初めてだよ」


オザキ、と名乗る男は、クスッと笑い、麻紀も思わず釣られて笑った。


その途端、ズキーンと脳天にカミナリが落ちたような痛みが麻紀を襲った。


(いたたた…)


オザキは、両手で自分の浴衣の太腿を
パン!と叩き、勢いよくソファから立ち上がった。


「でも、昨夜はありがとう。3日も1人でバイク乗ってて、人恋しくなっていたところだったから、麻紀さんと話せて楽しかったよ。

目が覚めたから、1人で帰れるでしょ?コーヒー飲んだら、俺がシャワー浴びているうちに帰りなよ。
それじゃあね。よい旅を!」


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