お熱いのがお好き?


「麻紀ちゃん…」


葉子は弱々しい声を出した。
ハンカチを鼻にあて、ズズッとすする。

鼻水は本当に出ていた。


「私、麻紀ちゃんには本当に悪いことしちゃったわ…
誰でも間違いはあるのにね?

真和だって、ああ見えて麻紀ちゃんのこと愛していたのよ。
私が強引に離婚させてしまってから、真和、ぼんやりして、酒ばかり飲むようになって。

なんとか仕事はしてたんだけど、ついに肝臓やられてしまって。この間、二週間も入院しちゃったのよ…

あんたみたいな嫁でも、真和は真和なりに大事だったのよ。
やり繰りヘタ、料理ヘタ、部屋の趣味も気持ち悪い。
その上、変に若作りな格好をする妻でも、あの子にとって、あんたはオンリーワンの存在だったのよ。

世界でたったひとつのナントカだったのよ…

あの子があんたの愚痴ばかり言うもんだから、私も真に受けてしまったんだけど、本当に、本当に私、馬鹿だったわ……」


(後半の方は、元の意地悪ババアに戻ってんじゃん。
演技の詰めが甘いんだよ…)



「だから、なんですか?」


麻紀は、ストップをかけるように鋭く言った。

昔から葉子の話はダラダラと長い。自分でも止まらなくなってしまうのだ。


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