おかしな二人


山崎の家に入ると、母も少しは楽な生活ができるようになった。
山崎の父も、再婚した当初はちゃんと仕事をしていたからだ。
それでも母は、レジのパートに数時間出ていたけれど。

あたしは、母が帰ってくるのを毎日心待ちにしては、キッチンで夕食の支度をしている母に、毎日のように絡みつき甘えていた。
そんなあたしを見た凌が、母の邪魔になるから、とあたしを連れ出し、近所の公園や家の前で遊んでくれた。

その後間もなく、山崎の父が仕事へ行かなくなり始め、母のパートの時間は長くなり、あたしが甘えられる時間はなくなった。
凌と二人だけでいることが、増えていったんだ。

初めは、凌がいるから寂しくはなかった。
けれど、母が亡くなり、凌のいじめがエスカレートし、家は極貧になり。
あたしの人生は、坂道を勢いよく転げ落ちるボールの如く落下していった。
転がった先に、猛スピードで飛び出してきた車がいなかったおかげで、あたしは生きているようなもの。
もしも、何かしら他の不幸が重なっていたなら、あたしは人生に疲れ、独りで生きて行く事を諦めていたかもしれない。

落下し、底辺にたどり着いてしまったけれど、若さのおかげか、頭の弱さからか、まだ立ち上がる気力はあった。
だから、あとはまた上るしかない。
転げ落ちた坂道を、息を切らしてでも登っていくしかないんだ。

そんな風に、あたしは今まで先の見えない上り坂を一歩ずつ苦しくても上ってきたんだ。



< 274 / 546 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop