おかしな二人


胸に手を当て、大きく息を吸い吐き出していると、ガラスケースに釘付けだった水上さんが視線をパッとあたしのほうへと向けた。

「どないしたんや?」

姿勢を起こし、胸に手を当てたままのあたしに問う。

「ううんっ。なんでもない」

咄嗟に掌をパーにして胸の前でひらひらと振り、平気なふりを装ってしまった。

だって、大切なプレゼントを選んでいるというのに、わけのわからない症状を訴えて邪魔をするわけにはいかない。

水上さんが視線をガラスケースへ戻すのを確認してから、もう一度息を吸って深々と吐き出す。

一体、この不快感はなんなんだろう……。

この店の雰囲気に、体質が合わないのだろうか。
だとしたら、根っからの貧乏性という事だ。


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