おかしな二人


家の掃除は毎日変らずしていたけれど、大掃除を三日に分けてこなした。
電球を替え、網戸も綺麗にし、フローリングもワックス掛けした。
キッチン周りの換気扇や、水周りも徹底してきれいにしていくと、気がつけば年明け二日前になっていた。


「年越しライヴ。観に来るか?」
「年越しライヴ?」

遅くに帰ってきた英嗣が、帰りを待っていたあたしに訊ねる。

ここに来てテレビを見るようになったとはいえ、何もかもに精通するほどではなかった。
なので、英嗣からそう訊かれても、何のことかさっぱり。

「俺らのバンド、三年前から毎年カウントダウンライヴしてるんよ」
「へぇ~」

あたしは、まさに、へぇ~という顔で英嗣の話を聞く。

「明さえよかったら、チケットあるさかい」

そのチケットがどれほど入手困難で価値のあるものなのか少しも解らず、あたしはまたしても、へぇ~と声を洩らす。
しかも。

「考えとく」

なんて言ってしまった。


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