曖昧HONEY
「つまり…」
私の話を聞き終えて。
それまで黙っていた龍ちゃんがようやく口を開いた。
「“家族”がいればいいんだな?」
「…え?」
「そうすれば、こんなバカな真似はしないで素直に家に帰るんだな?」
「は?」
…確かに、
話の流れ的にはそうなるけど…でも、そんなに単純なことじゃない。
私はもうあの人たちを家族だなんて思えないし、あそこには私の帰る場所なんてないんだから。
今さら、何をどうしたら…
黙り込む私に、龍ちゃんは言った。
「じゃあ、
俺が“家族”になってやるよ。」
軽い調子で。
とても無邪気に。
「俺がお前の“家族”になって、家で帰りを待っててやる。そしたら帰ってくるんだろ?」
「何言っ…」
「よし、決まり!そうしよう。」
まるで子供の約束。
だけど、
それがすべての始まりで。
今思えば、
それが“プロポーズ”ってやつになった。