l'Aube
「御利用ありがとうございました」
律儀なホテルマンが私に向かって頭を下げる。
相変わらず無愛想な私は軽く頭を下げて扉を抜けた。
「日焼け止めしてないんだけどな…」
昨日の雨は嘘のように晴れ渡る太陽に目を細める。
化粧ポーチに入れてあると思っていた日焼け止めは今頃私の部屋の引き出しの中だろう。
駅前のホテルで良かった。
私はなるべく日差しを避けて駅のホームまで急いだ。
もう真夏みたいな天気で嫌になる、
そう思いながらも駅のロータリーまでたどり着く。
ここは近くにも大学があるようで
行きかう人は同年代の人が多かった。
午前中から御苦労なことだと他人事に思いつつ、
完全に屋根に差し掛かったところで足を止める。
「はぁ…やば…」
日差しが強かったせいかめまいがする。
見るとそこは昨日二人と出くわしたところだった。
「…、」
思い出すだけで吐き気がする。
それはショウコや早坂先輩に対する嫌悪感ではなく、
以前ショウコの傍であんな光のように笑っていた
自分に対しての嫌悪感。
昼間から閑散とした休憩所に入って端の端に座って壁に凭れる。
端に行く癖は昔から変わってないみたいだ。
「あれだけで動揺するとか…」
本当に情けない。
私は佐代子やアユミから
よく「ポーカーフェイスすぎる」と小突かれるのに
いまじゃそれが台無しだ。
鏡を見なくてもわかる自分の顔。
大方、真っ白い顔でいかにも病人顔だと思う。
頭にガンガンとショウコの昨日の声が響いて痛い。
出来るなら、
あそこで会いたくなかった。
出来るなら、
ショウコと早坂先輩の二人で居る所に会いたくなかった。
出来るなら、
………私のことなんて 忘れていて欲しかった。